お前の涙、俺だけに見せて


最後のほうの文字は、涙で滲んでいた。


私の涙だ。



一週間しっかり泣いたのに、まだ泣けるなんて……



ううん、泣き止まないと。


お母さんに言われたみたいに、笑顔でいないと。



そう自分に言い聞かせて、涙を拭う。



お母さんからの手紙を食卓の上に置き、作業を再開する。



お母さんの持ち物でいるものといらないものを整理し終えると同時に、インターフォンが鳴った。



「はーい」



返事をしながらドアを開けると、大家さんが立っていた。


いつも優しく声をかけてくれる、七十歳近いおばあちゃんなんだけどね。



「どうかしましたか?」


「お母さんのことがあって、さらに追い打ちをかけるようで申しわけないんだけど……このアパート、取り壊すことになったの」


「……え?」


「いえね、私も年でしょう?娘夫婦が心配してて……他の方は納得してくれて、あとは西野さんだけなの」



私……お母さんも失って、住むところも失うの……?



お母さんとの約束、早速破りそう……



「じゃあ、俺の家に来るか?」

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