お前の涙、俺だけに見せて


目にうっすらと涙を溜めてたら、そんな声が聞こえてきた。


顔を上げると、そこには予想外の人がいる。



「三神君!?どうして……」



三神君は黒いスクールカバンから、A4サイズの茶色封筒を取り出した。



「一週間分のプリントとノートを持ってきたんだよ。で、返事は?」


「えっと……」



急なことで頭が追いつかない。


なにも考えられない……



「今すぐ出ていけってわけじゃないの。一ヶ月後に取り壊しが決定してるから、二週間くらいは余裕があるわ」



私の頭の中を覗いたかのようなタイミングで、そんなことを言ってくれた。



「わかりました」


「ごめんなさいね」



大家さんはそれだけを言うと、自分の家に戻っていった。


この場には、私と三神君の二人しかいないということになる。



「とりあえず……入る?」


「ああ」



三神君がそう返事をしたから、私はドアをさらに開けて、三神君を中に入れた。



「……お母さん、亡くなったんだな」

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