お前の涙、俺だけに見せて
リビングに入るか、それよりも前に、三神君に言われた。
学校で聞いたのか、家の状態を見て言ったのかわからないけど……
「うん……三神君と別れてすぐに……」
私は食卓テーブルからお母さんからの手紙を取り、三神君に座るよう促す。
「じゃあ謝れなかったのか」
椅子を引く音と同時に聞こえてくる、三神君の質問。
私はお茶を入れようとキッチンにいたんだけど、そのまま黙って首を縦に振った。
すると、室内は静寂に支配された。
この重たい空気、なんとかしないと。
「あ、そうだ。三神君の家に来ないかってやつ、本気で言ってるの?」
三神君の前に冷たいお茶と、ちょっとしたお菓子を並べる。
そして、三神君の前に座った。
「え?ああ、まあ」
急に話題が変えられたせいか、三神君は生返事だ。
「俺の家、一人で住むには広すぎてさ。ちょうどいいかな、と」
男の人、ましては学校の人気者と二人きりってのがちょうどよくないんだけどね。
と、いう言葉が出かけたけど、ちゃんと飲み込む。
「でも、家賃とか……」
「親が払ってるから気にするな。俺の親と西野の親、本当に知り合いらしいし。事情を話せば許可してくれるだろ」
……お願いだから、これ以上驚きの情報を伝えないで。
あれは三神君の嘘じゃなかったんだね。