お前の涙、俺だけに見せて
「珍しいことがあるものね。千秋がただのクラスメートを、家に住めなんて言うわけないのに」
お姉さんはさらりとひどいことを言った。
まあ、三神君は気にしてないみたいだけど……
そりゃ、十年以上も付き合うと、慣れてくるか。
「西野が住んでたアパート、取り壊しになるんだって聞いて、住むところがないなら提供してやろうかと」
「その上から目線、ムカつくからやめて。でも、花ちゃん一人なの?親御さんは?」
「母はつい先日他界しました。父はもっと前に死んだらしくて、会ったこともありません」
……私もさらりとすごいこと言ったかも。
悲しげな空気、出してないし。
それなのに、お姉さんは申しわけなさそうな表情を浮かべている。
「……千秋が花ちゃんを家に呼んだ理由はこれか」
「察しがよくてなによりだ」
姉弟だからか、どことなく二人の雰囲気は似ていた。
「花ちゃん!もう、ここが自分の家だと思って、自由にのびのびと過ごしていいからね!もし千秋が邪魔なら、連れて帰るし!」
すると、お姉さんは思いっきり私の肩を掴んだ。
勢いに負けて私は一歩下がる。