お前の涙、俺だけに見せて
「部屋という部屋にはなったな。じゃ、俺は自分の準備をしてくる」
「ありが……」
三神君は私のお礼を聞き終えるよりも先に、部屋を出ていった。
しょうがない、きっと聞こえてなかったんだよ。
さて、私も準備しよう。
「三神君、終わった……」
数分後、部屋から出てリビングに行くと、三神君はソファの上で寝ていた。
「疲れてたのに手伝ってくれたのかな。ありがとう、三神君」
そばに座って、さっき言えなかった言葉をささやいた。
「礼を言われるようなことをした覚えはねーよ。俺は住む場所を提供して、引っ越しを手伝っただけ」
すると、背もたれのほうから三神君の声がした。
「え、起きてたの!?ていうか、だけって……」
三神君の感覚もわからない……
それだけのことをしてもらってるんだから、お礼を言わないほうがおかしいもん。
「ん?もう出れるのか?」
私の荷物に気付いた三神君は、体を起こした。
「あ、うん。とりあえず」
「んじゃ、行くか」
私は三神君の後に続いて家を出た。