お前の涙、俺だけに見せて
そして三神君の家に入った瞬間、お姉さんに抱きつかれた。
「ようこそ、花ちゃん。ゆっくりしていってね」
お姉さんは三神君にはなにも言わず、私をリビングに案内してくれた。
リビングに行くと、三神君のお母さんがテーブルに料理を運んでいた。
「はじめまして、西野といいます。三神君とは同じクラスで……」
「堅苦しい挨拶はいいのよ、花ちゃん」
三神君のお母さんは微笑みながら、私の挨拶を遮った。
「三神君のお母さんは、私のお母さんと知り合いだったと伺ったんです。今日は、少しでもお母さんの話が聞きたくて……」
「あら、それで来てくれたのね。てっきり千里のわがままかと。そっか、詩織のね」
しまった。
タイミングを間違えたかもしれない。
今から楽しい食事会だっていうのに、空気を重たくしてしまった。
「とにかく、ちょうど料理ができたところなの。話はご飯を食べながらにしましょう。千秋も久々に帰ってきたんだし」
三神君はいつのまにか椅子に座っていた。
家族内での定位置があるみたいで、三神君のお母さんとお姉さんも座る。
私が座ったのは残った、三神君の隣の席。
たぶん、三神君のお父さんの席だと思う。