お前の涙、俺だけに見せて
食事が始まると、家族同士で話が盛り上がっているみたいで、私はなかなか混ざることができなかった。
「そうだ、花ちゃん。詩織のお葬式、行けなくてごめんなさいね。私も仕事があるから……」
「いえ。身内だけでやったので、気にしないでください」
本当に、お母さんの葬式に出席したのは身内だけだった。
それも、お母さんの思出話とかもなく、違う意味でしんみりとして終わった。
だから、誰も来なくて正解だったお葬式になった。
「それにしても、あの詩織が病死なんて……」
三神君のお母さんは寂しそうに、かつ驚いたように言った。
「そんなに信じがたいことなんですか?」
「私と詩織は高校のときの同級生なんだけど、私が知る限り、詩織は体調を崩したことがなかったの。だから、なんだか信じられなくて」
そういえば、お母さんが体調を崩したのは、入院する直前だけだった気がする。
「でもまあ、それはただの意地っ張りだったんだけどね」
「どういうことですか?」
「本当は熱やらあるのに、それを他人に気付かれないように振る舞っていたってこと。だから、みんな詩織が体調を崩すなんて思えないの」
「そうだったんですか……」