お前の涙、俺だけに見せて
だとしたら、私にも体調が悪いのを隠していたのかもしれない。
ううん、そうに違いない。
だから倒れて入院時点で手遅れだなんて言われるんだよ。
お母さんの余計な意地っ張りが死を招くなんて、誰が予想できただろうね。
「他は?花ちゃんのお母さんって、どんな人だったの?」
私がしんみりしていたからか、お姉さんがそう言ってくれた。
「とてもいたずら好きだったわ。詩織とよくつるんでた人たちからしてみたら、そんなの日常茶飯事だってくらい」
「そんなにですか!?」
私は思わずむせてしまった。
「そうよ。物が隠されたり、プリントに落書きされたり……とにかく、たくさん。でも、そのほとんどは高校時代の詩織の彼氏がやられてた」
……なにやってたの、お母さん。
「私はそんなことをされてるから、てっきりさっさと別れると思ってたんだけど、これがなかなか続いてたのよ」
「いたずらのレベルを超えたいじめをされてるのに、彼氏がフラないとか、信じられなーい」
お姉さんは満腹になったのか、水を飲んで背もたれに体を預けた。
お姉さんの発言に対して、私と三神君は顔を見合わせた。
そりゃ、お母さんの彼氏さんのことも理解できないけど、お姉さんの恋愛も理解できない。
自分のことを棚に上げて話すお姉さんがなんだかおかしくて、私たちはお互い笑ってしまった。