お前の涙、俺だけに見せて
私はその場に立ち上がり、軽く頭を下げる。
「千秋の父です。ゆっくりしてってね」
三神君のお父さんはそれだけを言うと、階段を上っていった。
「親父が帰ってきたから、向こうが突っ込まないかぎり、西野の親の話はしないってことで」
三神君は冷たくそう言うと、食器をさげに立った。
そしてそのまま洗い始める。
「千秋ー、ついでに私たちの分もよろしくー」
お姉さんはそう言うと、食器はそのままにし、テレビの前にあるソファーに寝転がった。
「ったく……自分の食器くらい自分でやれよ」
文句を言いながらも、三神君はお姉さんの分や、空いている食器をさげる。
「三神君、手伝うよ」
食べ終えて三神君の横に立つ。
「三神君、手際いいね」
見ると、もうほとんどの物が洗われていた。
「一人暮らしで慣れたんだよ。まあ、料理は一向にうまくならねーんだがな」
「そっか。なら、私が三神君と一緒に住んだら、私が料理担当だね」