お前の涙、俺だけに見せて
隠すもなにも、私の彼氏なんて、存在しないし。
どこでそんな勘違いしたの、お母さん。
「花の幸せ姿が見れたら、お母さん思い残すことはないのよ」
お母さんは両手をあわせて、無邪気に笑った。
こんな笑顔見せられたら、彼氏はいません、なんて言えないよ……
「……わかった。でも、連れて来られるのはいつになるかわからないからね?」
「いつでもいいわよ」
その日はお母さんとはそのまま別れて、私は家に帰った。
……さて、どうしたものか。
彼氏どうこうの前に、まず私に好きな人がいない、というのが一番の問題だ。
となると、誰かに彼氏役をやってもらうしかない。
あ、彼が適任かも。
同じクラスの三神千秋君。
女の子に人気だし、私が地味で不釣り合いなのがあれだけど。
でも、女の子と付き合いなれてて、数日くらいなんてことないと思うから……
そうと決まれば、さっそく明日頼んでみよう。