お前の涙、俺だけに見せて


隠すもなにも、私の彼氏なんて、存在しないし。



どこでそんな勘違いしたの、お母さん。



「花の幸せ姿が見れたら、お母さん思い残すことはないのよ」



お母さんは両手をあわせて、無邪気に笑った。



こんな笑顔見せられたら、彼氏はいません、なんて言えないよ……



「……わかった。でも、連れて来られるのはいつになるかわからないからね?」


「いつでもいいわよ」



その日はお母さんとはそのまま別れて、私は家に帰った。



……さて、どうしたものか。



彼氏どうこうの前に、まず私に好きな人がいない、というのが一番の問題だ。



となると、誰かに彼氏役をやってもらうしかない。



あ、彼が適任かも。



同じクラスの三神千秋君。


女の子に人気だし、私が地味で不釣り合いなのがあれだけど。



でも、女の子と付き合いなれてて、数日くらいなんてことないと思うから……



そうと決まれば、さっそく明日頼んでみよう。

< 4 / 161 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop