お前の涙、俺だけに見せて
「……そうか。それなら、家賃もいらない」
「でも……」
「遠慮することはない。バイトでもしていないと、あのアパートの家賃は払えたもんじゃない」
それもそうだ。
あんな高級そうなアパート、貧乏人の私には、無縁なものだもん。
払えるわけない。
「そういうことだから、家賃の代わりに料理を担当してもらおうと思ってる」
三神君はやれやれと言わんばかりに息を吐いた。
「なるほど、それは名案だ!千秋の料理はお世辞でも美味いとは言えないからね」
すると、一瞬でその場が笑いに包まれた。
これ以上、あの話題を続けるのはよくない。
せっかく三神君が空気を変えてくれたんだし。
それからというもの、誰一人私と三神君の同居について触れなかった。
そして、本当に夜まで話し続けた。
お風呂を済ませた私は、お姉さんの部屋に行った。
「どう?ゆっくり入れた?」
お姉さんはベットの横に布団を敷いていた。
「はい」
「そう、よかった。ちょうど布団も敷けたし、寝よっか」