お前の涙、俺だけに見せて


「わかりました」


「ありがとう。食材とか、好きに使っていいから」



お母さんはそう言うと、寝室に戻っていった。



「さて、ちょっとだけ張り切っちゃいますか」



一時間が経とうとしたとき、弁当と朝食が完成した。



「おはよう、西野さん」


「おはようございます」



一番最初に起きてきたのは、お父さん。


次にお母さん、お姉さんの順だった。



「え、もしかして、これ全部花ちゃんが?」


「はい。皆さんのお口に合えばいいんですけど……」



みんなそれぞれ席に着き、料理を口に運ぶ。



「おいしい!」


「こんなに上手だったなんて。もっと早く頼めばよかったわ」



みんなが褒めてくれるのは、なんだか嬉しいな。



「そうだ、花ちゃん。千秋起こしてきてくれる?」



手を洗っていたら、お母さんが微笑みかけてきた。


そんなことまでしたら、なんだかお母さんになった気分だ。

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