お前の涙、俺だけに見せて
……本当に?
お姉さんの言葉を否定しようとすると、言葉がつまってしまった。
私、三神君のことが好きなの……?
「そっか……好きになったか」
肯定されると、違うような気もしてくるけど……
そもそも、好きになるきっかけがない。
「花ちゃんはきっかけがないのに、とか思ってるだろうけど、好きになるのにきっかけなんていらないんだから」
私の頭の中の言葉が聞こえたかのように、お姉さんはタイミングよくそう言った。
「そうなんですか?」
私のために出した道具を片付けている、お姉さんに聞く。
「そうだよ。気付けば好きになってる。だから、どうして好きになったのかなんて、考えないほうがいいよ。思考の迷路に陥るから」
今までお姉さんの恋愛観が理解出来なかったのが、嘘みたい。
お姉さんの言葉で、すっと心が軽くなったような気がする。
「相手が千秋ってのがあれだけど、花ちゃんの恋なら応援するよ。それじゃ、そろそろ行こっか」
私はお姉さんについて家を出た。