お前の涙、俺だけに見せて
「安定の人気だなー、千秋は」
それを遮ったのは、隣に立った男子生徒。
三神君、なにを言おうとしたのかな。
「またさらにうるさいのが来た」
三神君はため息をつく。
その隣にいるのは、三神君と同じくらい人気の野澤嵐士(のざわあらし)君。
女関係にはいい加減な人っていう噂を聞いたことがある。
「君、西野花ちゃんだよね?」
野澤君が私の名前を口にすると、周りの生徒がざわついた。
「そうですけど……どうして私の名前を?」
「全校の女子の名前は把握してるよ。それにしても、変身したね。すごく可愛い。ね、千秋?」
野澤君、ナイス!
三神君が可愛いなんて言ってくれないことくらいわかってるけど、どうしても期待してしまう。
「俺に振るな」
ほらね。
知ってましたとも。
三神君は不機嫌そうに校舎に足を向けた。