お前の涙、俺だけに見せて
「素直じゃないなあ。絶対、千秋好みなのにー」
野澤君は、頭の後ろで手を組みながら校門をくぐる。
「本当?」
私はつい、野澤君の言葉に反応してしまった。
「なになに、花ちゃんも千秋狙い?どうしてみんな千秋ばっかり……」
野澤君は悔しそうに言う。
多分だけど、野澤君がいい加減な人だからだと思う……
本人には言えないけど。
「ま、その格好は本当に千秋好みだから、好かれたいなら続ければいいよ。ついでに、俺も今の花ちゃんが好き」
「どうも」
心のこもってない告白をありがとう。
でも、三神君がこの格好を好んでるっていう情報が手に入ったのは嬉しい。
続けたいなって思うけど、自分一人の力でこの格好が出来る気がしない。
ていうか、一番の問題はほかにありそうなんだけどね。
「嵐士ー!」
不本意ながら野澤君と並んで歩いていたら、後ろから大きな声がした。
私が呼ばれたわけじゃないのに、私は足を止めて振り返った。