お前の涙、俺だけに見せて
よかった……
これでお母さんを喜ばすことができると思うと、自然と笑がこぼれる。
「じゃ、俺先に教室に戻ってるから」
三神君が階段を上っていったと同時に、チャイムが鳴った。
私も急いで教室に戻った。
あれから三神君と会話をすることなく、放課後になった。
「千秋ー、カラオケ行こー」
「悪い、今日は用があるんだ」
三神君は可愛い女子の誘いを断って、廊下の一番後ろにある私の席に来た。
「ちょっと、なんで西野さんのとこに行くの?」
……口調は厳しいし、視線が怖い。
「西野の親と俺の親、知り合いでさ。今、入院中の西野の親のお見舞いに行ってくれって頼まれたんだよ」
よく平然と嘘がつけるな……
もしかして、あらかじめ考えてたのかも。
「西野さん、本当?」
視線があまりにも恐ろしくて、私は黙って何度も頷くしかできなかった。
「んじゃ、そういうわけでまた明日な」
私は三神君に手首を引かれて、教室をあとにした。