お前の涙、俺だけに見せて
「三神君、ごめんなさい……」
昇降口を出て、三神君が私の手を放すと、私は三神君の背中にささやきかけた。
「そう思うなら、俺を巻き込むなっつーの。自分の力でなんとかしろよな。そもそも、嘘ついてまで親を喜ばそうとするか?普通」
三神君は歩き続ける。
……正論すぎて、返す言葉もない。
すると、三神君のため息が聞こえてきた。
私、どれだけ三神君を呆れさせてるのかな。
「……ごめんなさい」
そう思うと、これ以外の言葉は見つからなかった。
それからは会話もなく、病院に着いた。
今まで生きてきた中で、一番長かった十数分間だった……
病室に入ると、お母さんは本を読んでいた。
私に気付くと、本を閉じた。
そして、私の後ろにいる三神君を見て、驚いたような顔をしたと思えば、顔をほころばせた。
「えっと、私の……彼氏の三神千秋君」
「はじめまして。三神です」
私の隣に来た三神君は、軽く頭を下げた。