お前の涙、俺だけに見せて
「ごめんなさいね、出せる飲み物はなくて……そうだ、花。買ってきてくれる?」
「わかった」
正直、お母さんと三神君、二人きりにさせたくなかった。
だけど、それを断る理由には出来なくて、私は休憩室に行って、自販機でペットボトルのお茶を三本買って戻った。
「おかえり」
お母さんは満足そうな顔をしていた。
「ただいま。お母さん、三神君に変なこと言ってないよね?」
「言ってない、言ってない」
お母さんの笑顔が、信じられない……
「さてと。もう時間も時間よ。二人でデートでもしてきなさい」
お母さんに言われて時計を見たら、五時すぎだった。
ていうか、デート!?
付き合ってもないのに、できるわけない……
「ありがとうございます。花さんのことは任せてくださいね」
三神君!?
なに言ってるの!?
……なんて、反論しかけたけど、ここで私がなにか言えばすべてが水の泡。
出てきかけた言葉を慌てて飲み込む。
「またね、花」
「うん、また来るね」
そう言って、私は病室を出た。