お前の涙、俺だけに見せて
すると、突如現れた野澤君が、麗ちゃんの頭に顎を乗せた。
「嵐士のことは呼ばなくていいからね、花」
……見事なやきもちを見たような。
「わかった、麗って呼ぶね。野澤君は野澤君で」
「うん!」
「ちぇー。俺だけ距離があるままじゃんかー」
満足げに笑う麗と、口を尖らせる野澤君。
真逆な反応だなあ。
「お前ら、花の邪魔すんなよ」
「千秋。大丈夫、もう完成したから」
私はお皿に盛り付ける。
「さすが、私のお嫁さん」
「お前になんかやるかよ」
……千秋のその言葉は、スルーさせてください。
昼食を終えると、また三時間くらい勉強に取り組んだ。
「もう無理!」
一番にギブアップしたのは、意外にも麗だった。
「遊びたいー!」
「麗頑張ってたからね。散歩にでも行く?」