ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
「ミライッ!」

慌ててミライを抱き起こした!が、だらりとうな垂れたままピクリとも動こうとしない!

「ちょっと先生!その子ペースメーカーでも埋め込んでるのっ!」

と平山さんの声が飛んできた。

「電磁石を使ってるのよ!強力な磁場が出るの!あなただけだと思って動かしたのに!」

とすごい剣幕で平山さんが捲し上げてきた。

(磁場か!それでミライが止まったのか!)

中身はコンピューターだ。磁場の類には弱いに違いない!

「ミライ、大丈夫か!返事をしてくれ!」

揺さ振っても動く気配がない。どうしよう。堪らずミライの頭を抱え込んだ。

(大変だ。何て事だ。このまま動かなくなったら)

全てが台無しになってしまうじゃないか!

「そんな…」

とその時、喉の奥から微かな声が聞こえてきた。

『セーフモードで再起動します』

確かにミライの声だ!

「ミライ!」

まだ望みはある。まだ何とかなる筈だ。

「キャーッ、ミライさん!」

遅れてやって来た広海君の悲鳴が響いた。

「救急車を呼んで!」

と平山さんの声。

(いや、それはマズイ!)

救急車なんか呼ばれたら、ミライの正体がバレてしまう!

「待ってくれ、タクシーを、タクシーを呼んでくれ!早く!」

所長のところへ連れて行けば必ず何とかしてくれる。僕はその一心でミライを必死に抱きかかえていた。
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