ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
場面に応じた表情やしぐさやセリフ回し。そういった事を、実際に目で見て耳で聞いて自分の身に付けるのに、僕の実験室以上の環境はないかもしれない。

(…そこまで考えてたのか、あの所長は)

初めて会った時と比べれば、ミライは格段に可愛らしくなっている。見かけはもちろん、しぐさや言葉使いだって。

(所長にしてみれば、してやったりってトコロか)

背凭れに体を預けながら、まだ少し暑そうに手で扇いでいるミライに目をやった。見つめるミライの額にじんわりと汗が滲んでいる。

(体温を下げる為の汗だよな)

そりゃロボットだって暑いよな。

(…あれっ、そういえば、暑いからって自分から服は脱がなかったよな?)

僕に言われて初めて、ミライは服を脱いだ。自分じゃそういう判断が出来ないのか?

(まさかそんな訳ないよな。暑いから服を脱ぐって事ぐらい、頭で判断して出来そうだけど…)

それとも、わざわざ外を選んで座った僕に気を遣ってくれたとか?

(…うーん、どこまでわかってて、どこからわかってないんだろう)
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