ふたりの彼女と、この出来事。（旧版）

　映画を見終えて広海君とルミちゃんたちと別れて、まだ外が明るい内にアパートに帰ってきた。夏に階段を三階まで上がるのは結構キツい。と部屋の前で扉の鍵を開けようかという時、ミライがあさっての方向をじっと見ているのに気づいた。

「ん、どうしたんだ？」

ミライが見つめる先に目を向けた。と向かいのマンションのベランダに、タバコ片手にこっちを見ているニヤけ顔の所長がいるじゃないか！

「所長ぉ！どうしてそんなところに！」

この人はいっつも僕を驚かせてくれる。

「やあ！夏休みの間だけここに引っ越して来る事にしたんだよ！」

とよく見ると、窓の奥の部屋の中で奥さんらしい女性がダンボールを抱えて歩き、そのまわりで小さな女の子二人が楽しそうにじゃれ合っているのが見えた。

「こっちに来ないか！コーヒーぐらい出すよ！もちろんインスタントだけどね！」

と声を掛けてくれた所長に頷き返して、ミライと一緒に所長のマンションにお邪魔することになった。