ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
「嘘ついてない?」

「ついてないよ」

売り言葉に買い言葉。

(まさか、気付いたとか…)

マズイかなとは思ったけど、ここはそう答えるしかない。と、広海君が眉をギュッと顰めた。

「ねぇ、裏で浮気してるんじゃないの」

と詰問してくる広海君。なるほど、そっちを疑ってたのか。

「そんな事しないよ」

それは心から言える。と、広海君がじっと僕を見つめたあと、不意に目を閉じた。

「そう」

と机に向き直って肘をつき、顔を隠すように手を額に当てて首を振る広海君。近寄らないでオーラはまだ消えてはいない。

「…じゃあ、先に帰るから、あんまり遅くならないようにね」

優しく言葉を掛けて、そっと扉を開けて、静かに自分の部屋へと帰った。
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