ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
 次の日の朝、広海君が実験室に来なかった。

「まだ拗ねてるのか…」

ちょっと心配になって電話を掛けようかと思ったその時、広海君の方から掛かってきた。携帯を開くと、スッピンで髪もボサボサの広海君が映った。

「センセェ~、カゼ引いたぁ…」

とゴホゴホと咳き込む広海君。まさか、彼女が風邪を引くなんて。

「だ、大丈夫か?」

いつもは風邪のウイルスの方が逃げ出してしまいそうなのに。

「うん。でも休む。心配しなくていいから」

と電話が切れた。

「…」

心配しないでって言ってるから、下手に世話すると逆効果かな。

「様子を見るか…」

何かあったらまた電話してくるだろうし。それまで待つのが賢明だ。
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