ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
 午後。実験室の扉がガチャッと開いた。

「ただいま~」

と現れたのはミライ。

「あれ、早かったね」

明日までじゃなかったのか。

「うん。早く終わったから帰ってきたの」

と微笑むミライの後ろから所長が扉を閉めて入ってきた。

「イイ調子だよ。興味深いデータも取れてるしね。ウンウン」

とニッコリ嬉しそうな所長。

「あらっ、広海さんは?」

とミライが部屋を見渡した。

「うん、風邪引いたって休んでるんだ」

と答えると、ミライが心配そうに所長と見合った。

「風邪?大丈夫かしら」

と顎に手を当てて考え込むミライ。

「朝、電話では大丈夫って言ってたけど」

ヘタに手は出さない方が。

「でも、いつもは元気そうだから、心配」

確かに、辛そうに咳はしていたっけ。

「寝込んでるんだったら、看病しに行った方がいいね。強がって大丈夫って言ってるのかもしれないよ、彼女みたいなタイプはね」

確かに。一人で熱にうなされてるのかもしれない。

「ちょっと、行ってみようかな」

思わず椅子から立ち上がって、まず教授に事情を電話で告げた。

「ボクの車で行こう。なんだったら病院に連れて行ってもいいよ」

おぉ、ありがたい言葉です所長。

「それじゃ、行きましょう」

ミライと所長を引き連れて外へ出て、広海君の部屋へと向かった。
< 182 / 324 >

この作品をシェア

pagetop