ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
 ちょうどお昼休みの時間になって戻って来ると、本田君が一人、ミライの台座の傍のパソコンデスクに腰掛けて黙々とキーボードを叩いていた。

「所長ぉー、何とかしてくれませんか、アレ」

と眉を顰めて機器類の列の向こうを指差す本田君。見ると壁際の机の前で、椅子に腰掛けたロイの膝の上に横向きにクワンが座って、互いの肩に手を廻しながらラブラブにおしゃべりをしていた。

「しょうがないよ、愛情にアツくなるように作ったんだからね」

「にしても度が過ぎてませんか。あれじゃ仕事が捗るワケないです」

確かに二人は何をする訳でもなく、イチャイチャとおしゃべりをして、熱~いキスまでしてる。

「マッタク、見てられないですよ」

と目を背けるようにバッと机に向き直る本田君。

「しょうがないよ、クワンが管理者なんだから。それとも何かい、君を管理者にしてロイに惚れられるかい?」

「そんなのゴメンです」

と溜息交じりに答えた本田君が、諦めたようにまたキーボードを叩き始めた。

「…もう少しかかりそうだね。控え室で待ってようか」

所長に導かれて控え室へと場所を移して、相変わらずのインスタントコーヒーで時間を潰した。



 ミライの検査が終わる前にクワンがロイを連れて上へ行ってしまい、所長と本田君だけが僕らを見送ってくれた。

「今度そっちで学園祭があるんだって?みんなで遊びに行こうと思ってるんだ。いいかな?」

と微笑みかけてくる所長。そんな訪問なら大歓迎ですよ。

「ええ、もちろん」

「じゃあ、その時を楽しみにしてるよ」

笑顔で手を振る所長に見送られて、僕とミライは研究所を後にした。
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