ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
「そうなの。私たち二人だけ」

これまた珍しい。

「所長抜きでここで二人と会うなんて、なんだか不思議な感じだね」

研究所以外でクワンたちに会うのは妙な違和感がある。

「所長も来たがってたのよ。でも、本田君と一緒に局長に捕まってしまったの。予算の使い過ぎで、これからどうするのか話し合いをするって言ってたわ」

と首を竦めるクワン。それは来れないワケだ。とクワンが広海君に歩み寄って、何を思ったのか両手をパンッと胸の前で握り締めて話し掛けた。

「あなたが広海さんね!はじめまして。私はクワン。お話は『色々と』聞かせてもらってるわ。ぜひ一度会いたかったの、嬉しいっ!」

って、あの、クワンさん?何をそんなにはしゃいでるんですか?

「エヘッ、そうなんですかぁ~?こちらこそよろしく~クワンさん」

と笑顔で応じる広海君。が、一瞬チラッとこっちを見た時に、眉がピクッと動いたのを僕は見逃さなかった。

(こりゃ穏やかじゃないゾ…)

後で何か言われそうだ…。と、クワンがパッとロイの腕を取った。

「彼は同じ研究所にいるロイ。イイ男でしょう」

と微笑むクワン。背がスラッと高くキリッと整った顔立ちは、まるでアジアの映画スターのようだ。

「はじめまして」

とロイがスッと笑顔で広海君に手を差し出した。

(おっ、握手をする気か?!)

まあ、バレないとは思うけど…。
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