ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
「はじめましてぇ~。ほんとカッコイイですね~」

と、何事もなく広海君がロイと握手を交わした。良かった良かった。

「ミライさんもロイにきちんと会うのは初めてかしら?まだ話はしてない筈よね」

検査の時はミライがセーフモード状態だったし、その前はロイがまだ起動していなかった。

「ええ。はじめまして。ミライです」

とミライが差し出した手を、ロイが笑顔で握り返した。

(…これってホントは、ロボット同士が握手を交わしてるんだよな)

実は歴史的な一瞬を目の当たりにしてるワケだ。

「あのう、この部屋お茶も何にも出せないから、教授の部屋に行きませんかぁ?」

と済まなそうに声を掛ける広海君。

「ううんいいのよ。普段どんなところで実験をしてるのか興味があって来ただけだから。それよりも、奥の部屋を見せて欲しいわ。どうかしら?」

とガラス窓で隔てた奥の無音室を指差すクワン。

「どうぞどうぞ」

と僕が頷くよりも先に、広海君がドアを開けて奥へと導いていた。とクワンに続いて何食わぬ顔で後について入って行くロイ。

(おっ、ロイはこの部屋平気なのか)

ミライは入るのを渋るのにロイにはそんな様子がない。それだけ電磁波対策がシッカリ出来ているという事か。

(進化してるんだな…)

ミライより進んでるのかと思うと、ちょっと悔しいような気もする。

「…」

ふと見ると、ミライが手を胸の前で握り締めて、戸惑う様子でガラス越しに中を見ていた。

「気にする事はないよミライ」

声を掛けてミライに歩み寄ると、ミライがスッと寄り添ってきた。

「うん」

落ち着いたように横に寄り添ってくるミライ。ふたり一緒に並んで、中で説明を聞くクワンとロイの様子を暫く眺めた。
< 190 / 324 >

この作品をシェア

pagetop