ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
 12月もあっという間に過ぎて残すところ一週間となった24日。所長に研究所に来るように呼ばれて、ミライと一緒に大学を出て校門に横付けされたテレビ局の車に乗り込んだ。

「じゃ、お願いしま~す」

騒ぎが始まって一ヶ月以上が過ぎた。マスコミやヤジ馬も段々と落ち着きを見せ始めていて、囲まれる事にも少しは慣れてきた。

(スター気分も気持ちいいよな)

人間って恐ろしいものだ。

(一人じゃキツイけど)

傍にいるミライが見せる笑顔が僕の心に力をくれる。やがて車が研究所に着き、裏口から入って階段を上がり控え室の扉を開けた。中では研究員たちと所長がなにやら談笑していた。

「所長」

声を掛けると、所長がパッと振り返った。

「やあ、待ってたよ」

と立ち上がっていつものニコやかな笑顔で寄って来る所長。今日は何だろう。

「何かあるんですか?僕たちを呼んで」

と尋ねると、所長が両手を腰に当てた。

「今日から正月明けまで、ミライをボクの家で預かろうと思ってね」

と微笑む所長。

「え?ミライを預かるんですか?」

どうしてまた?と、所長がニッと笑みを返してきた。
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