ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
 次の日のお昼近くになって、広海君が実験室にやって来た。

「ずーいぶん、ゆっくりしてるじゃないか」

問い掛けると、広海君の澄ました声が返ってきた。

「ホントはまだ春休み。別にゆっくり寝てたっていいでしょ」

そりゃまあそうだけど。

「ねぇ、先生は眠たくないの?」

「もちろん。ちゃんと睡眠は取ってるからね」

と答えた途端、広海君が溜息を漏らしてきた。

「ふ~ん、昨日あれから何にもなかったんだ」

「ん?どういう意味だよ」

聞き返すと、ニヤーッと笑みをこぼしながら広海君が寄ってきた。

「あんなセリフ言われたんだも~ん、きっと夜だって盛り上がったんじゃないの~って思って」

オイオイッ!

(盛り上れるワケないだろ!)

ミライはロボットなんだゾ、と言えたらどんなにラクな事か…。

「ホントに何もなかったの?ねぇセンセェー、あんまりドンカンなのもちょっと考え物じゃない?私思うんだけど」

と腕を組んで叱るような口調で立っている広海君。堂々とした態度はどうしたもんだろう。

(なんだかなぁ…)

言い返す気力も起きてこない。それを知ってか知らずか、傍にいたミライがフフフと微笑んでいた。
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