探偵喫茶へようこそ


雪兎にされるがまま、帰ろうとしたそのとき、正広の携帯が鳴った。


二人はなんとなく、足を止めた。



正広は短い言葉で答えている。


そして電話を終え、小さく深呼吸をした。



「……おい、知由」


「どうした」



正広の行動をおかしく思った知由は、真剣な目で正広を見る。



「……真壁洋一(まかべひろかず)が銃刀法違反で逮捕されたらしい」



それを聞いて、知由にしては珍しく、喜びの笑みを見せた。



「行動が早い奴だったのだな」


「刑事が着いたら、もう成瀬が倒していたらしい。現行犯とはならなかったが、近くで見ていた夢郷未咲の証言で正当防衛とわかり、逮捕したと、連絡が入った」



正広はそう言いながら、立ち上がる。



「一弥たちは今からここに来るのか?」


「話を聞かないといけないからな」



知由はまた、何かを企んでいるように見える。



「では、一弥たちの事情聴取が終わってから、あたしたちは帰ろう」



それなのに、違うことを言った。



「ずっと待ってるの?」



知由が他の何かを企んでいると感じなかった雪兎は、待つという知由の言葉に疑問を持った。



「どうせ暇なのだから、良いだろう?」

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