探偵喫茶へようこそ
「あたしと海……滋の友人は二年前、裏社会では、そこそこ有名なハッカーだったのだ。そして、急に辞めたせいで今一位になったハッカーが、何を思ったか知らないが、誘拐した」
「あなたの代わりに、別の方が誘拐されたのは、あなたの情報に惑わされたから、だったよね?」
「そうだ」
「あなたは、何者……?」
その質問で、知由は言葉をつまらせた。
一弥たちには冗談混じりに優秀だ、天才だと言える。
だが、初対面相手にその対応は出来なかったのだ。
「天才美少女の悪魔だ。頭の中がどうなってるかなんて、考えねーほうがいい」
見かねた一弥がそう言った。
「天才美少女でも悪魔でもないが」
「はいはい、そうだな」
一弥は知由の言葉をさらりと流した。
知由は頬を膨らませる。
「えっ、どういうこと!?」
すると突如、滋が声を上げた。
「どうしたの、滋」
「スマホが使えなくなってるんだ。多分……世界中の全員」
滋に言われて、全員スマホの電源を入れる。
画面に表示されるのは『ERROR』。
窓を開けてみれば、スマホが壊れた、という声が聞こえてくる。
「……先手を打たれたか」
知由はそう呟くと、鞄の中からスケッチブックを取り出した。