探偵喫茶へようこそ
「おっ、懐かしい。それ、まだ持ってんだな。もう声は気にしなくて……」
「うるさい、少し黙ってろ」
思い出に浸ろうとしたが、知由のたった一言で撃沈された。
知由は懸命にスケッチブックに字を書いていく。
そして書き上がったものを、後部席に座る二人に見せる。
『喫茶店か車内が盗聴されたのだろう
向こうに私が本物のラビットだと知られた
スマホが使えないのも、私への挑戦状と見た
下手なことは言うなよ』
そして、知由は自分のスマホの画面も見せる。
『ERROR
unlock please』
他のスマホにはない言葉があった。
ちなみに、意味は『解除して』だ。
挑戦状として突きつけられているのだとすれば、解除しろ、のほうがふさわしいかもしれないが。
「一弥、目的地まであとどれくらいかかる」
スケッチブックとスマホを手元に戻し、一弥に尋ねる。
「あと……十分くらいか」
「上等だ」
知由は海のパソコンを使って、解除し始めた。
「そうだ、夏芽の話、今聞こうかな」