探偵喫茶へようこそ
知由は少し息を切らし始めた。
普通に歩くだけなら問題ないが、重たいパソコンを持っているのだ。
まだ十にも満たない子供には、少々酷な話だ。
「知由ちゃん、大丈夫?」
夏芽は解除を急ぐ知由に声をかけた。
だが、集中している知由の耳には届かない。
「今は何を言っても無駄だよ。終わってからにしない……」
滋が言う途中で、知由はドアの取っ手に手をかけた。
「知由ちゃん! パソコン、私が持とうか?」
「……頼む」
今意地を張るのは違うとわかっていたため、知由は素直にパソコンを夏芽に渡した。
というか、自分の物ではないから、人に持たせることに、抵抗がなかったのかもしれない。
知由からパソコンを預かった夏芽は、知由と距離を失くし、後ろを歩く。
「いいポジションに行ったなあ、夏芽」
「そのうち俺らにも役目が来るさ。あんなにあっという間に罠が壊されて、向こうが黙ってるわけねーだろうし」
一方、二人はまだ何もせず、後ろを歩いていた。