探偵喫茶へようこそ
その間、当然知由は暇を持て余し、外に出ていた。
「ねぇ、お嬢さん。ここでなにしてるの? 迷子?」
すると、見るからに怪しい女が声をかけてきた。
知由は警戒心を丸出しにする。
「……もしかして、知由梨……?」
突如、誰か知らない名前を口にし、女性は目を見開いた。
知由はどう反応すればいいのかわからず、固まっている。
「覚えてるわけ、ないか……」
「誰かと勘違い……」
「それはない!」
女性は知由の言葉を遮ってまで、真剣に否定した。
知由はますます固まる。
「自分の娘を間違えるわけないもの。って、今さら親を名乗るなって感じよね」
「……親?」
知由は不思議そうな表情を浮かべる。
「ええ。知由梨の母親、三崎梨奈。よかったら、今からうちに来ない?」
「は……」
「お父さんもいるし! ほら早く!」
知由は抵抗する暇も与えられなかった。
母親と名乗る梨奈に背中を押され、そばに停めてあった車に乗せられた。
一弥が、知由がいなくなったことに気付いたのは、それから数十分後、店から出たあとだった。