探偵喫茶へようこそ
「雪兎、知由を連れて来い」
「え? 何かあったの?」
「ちょっとな。今すぐこっちに……」
「ごめん、お父さん。ちぃちゃん、ここにはいないんだ」
「……どこに行った」
ただでさえ低い声が、さらに低くなった。
だが、聞き慣れている雪兎は、まったく動じていなかった。
「わからない。だから、お父さんに頼もうと思ったんだけど……」
「わかった。役に立ちそうなやつだけ連れてこい」
正広はそれだけ言うと、電話を切った。
「なんて?」
滋は携帯を置き、エプロンを外している雪兎に、声のトーンを落として聞いた。
「役に立つ人だけ連れて来いって」
「じゃあ……一弥だけだね。僕と海は単独行動が得意組だから」
滋の言葉に、なんとなく一弥に視線が集まる。
一弥は面倒そうに頭をかく。
「また刑務所行きにならないよう、気をつけて。レジーナさんと夏芽さんは待っていてください」
雪兎と一弥の間に温度差はあるも、二人は喫茶店をあとにした。