探偵喫茶へようこそ
一方そのころ、雪兎と一弥は警察署前に立っていた。
「あー……いつ来ても入りたくねー」
一弥は盛大にため息をついた。
「何言ってるんですか。もう後ろめたいことは何一つないでしょう?」
「気分的な問題だよ。そしてなにより、雪兎の父親に会いたくない」
「……今さらですね」
「るせえ」
雪兎がこう言う理由は簡単だ。
一弥が知由の付き添いで、何度もここに来ているから。
知由はあの喫茶店に来る依頼人だけでなく、警察からも依頼を受けているのだ。
もちろん、傍から見れば一弥が協力人と思われる。
それが、知由の狙い。
大人が子供の言うことを信じるわけがない。
それを知っているからこそ、一弥の存在を利用している。
ちなみに、知由が依頼を受けていると知っている人は、わずかしかいない。
「雪兎!」
一弥がうなだれている間に、一人の男性が駆け寄ってきた。
言わずもがな、雪兎の父親、正広だ。