探偵喫茶へようこそ


正広はそれに納得した。



だが、雪兎はまだ難しい顔をしている。


と思えば、何か閃いたらしい。



「もしかして……ちぃちゃん、わざと誘拐された……?」


「いや、なんでそうなるんだよ」



一弥の冷静な突っ込みが入るが、雪兎は自分の意見を曲げようとしない。



「だって、あのちぃちゃんですよ? 誘拐犯にのこのこ付いて行くと思いますか?」


「いや、全く」



雪兎の予想を否定したくせに、一弥は即答した。



「と言うより、一弥さんに付いて行くと言ったことが変だと疑うべきでした。僕はレジーナさんから逃げたいがために、一弥さんに連れていけと言ったとばかり……」



雪兎はどんどん後悔の色を出していく。



「なるほど。つまり、知由の目的は最初から囮になることだったのか」


「ちぃちゃんのことだから、事件を知って、犯人がどういう状況で誘拐するかを見抜き、行動をとったんだと思う」



義兄妹とは思えないくらい、雪兎は知由のことを理解していた。



「どれだけ天才でも、所詮ガキ。自分自身も誘拐された今、アイツに何が出来る? ただの役立たずに成り下がったな」



一弥はここぞとばかりに知由を見下す。


しかし、雪兎に睨まれてその気分は一瞬で終了した。



「最初から役立たずのお前に言われたくないだろうな」



さらに追い打ちをかけるように、正広のこの一言。

< 51 / 156 >

この作品をシェア

pagetop