探偵喫茶へようこそ
正広はそれに納得した。
だが、雪兎はまだ難しい顔をしている。
と思えば、何か閃いたらしい。
「もしかして……ちぃちゃん、わざと誘拐された……?」
「いや、なんでそうなるんだよ」
一弥の冷静な突っ込みが入るが、雪兎は自分の意見を曲げようとしない。
「だって、あのちぃちゃんですよ? 誘拐犯にのこのこ付いて行くと思いますか?」
「いや、全く」
雪兎の予想を否定したくせに、一弥は即答した。
「と言うより、一弥さんに付いて行くと言ったことが変だと疑うべきでした。僕はレジーナさんから逃げたいがために、一弥さんに連れていけと言ったとばかり……」
雪兎はどんどん後悔の色を出していく。
「なるほど。つまり、知由の目的は最初から囮になることだったのか」
「ちぃちゃんのことだから、事件を知って、犯人がどういう状況で誘拐するかを見抜き、行動をとったんだと思う」
義兄妹とは思えないくらい、雪兎は知由のことを理解していた。
「どれだけ天才でも、所詮ガキ。自分自身も誘拐された今、アイツに何が出来る? ただの役立たずに成り下がったな」
一弥はここぞとばかりに知由を見下す。
しかし、雪兎に睨まれてその気分は一瞬で終了した。
「最初から役立たずのお前に言われたくないだろうな」
さらに追い打ちをかけるように、正広のこの一言。