探偵喫茶へようこそ


一弥は出かかった言葉を飲み込んだ。



この親子に、勝てるわけがない。



そう悟ったからだ。



「ゆっきー! 情報集まったよー」



すると、聞きなれた滋の声がした。


振り返ると、滋一人が会議室に入ってくるところだった。



「滋! 本当に?」



滋の姿を見て、雪兎は椅子から立ち上がった。



「うん。でも……みさきちゃんのことじゃなくてよかったの?」



滋はドアを閉め、一弥と雪兎のところに近寄る。



「それが一番の近道だからね」



雪兎の言葉に、滋は首を傾げる。



しかし雪兎がそのことについて説明するより先に、正広が口を開いた。



「情報屋か。マシなのが来たな」



滋は正広に軽く頭を下げ、一弥の隣に座った。



「夏芽さんは?」



事件に全く関係のないことだとわかっていたから、一弥は小声で聞いた。



「喫茶店に戻ってもらった」


「やっぱり情報集めに連れていったんだな」

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