探偵喫茶へようこそ


「落ち着け、雪兎。知由、どうして逃げられた?」



正広は雪兎の肩に手を置き、知由から引き離した。



説明を求められた知由は、どこか余裕がなさそうな表情をしている。



「犯人の目的は、あたしだ。だから、あたし以外のやつらが逃げても問題ないと考えた。あたし以外が逃げても、犯人が追って来ることはない、と」


「でも、お前はここに……」


「友人と服を入れ替えて、囮になってもらった」



会議室全体に、動揺が走った。



まだ一人、犯人の手から逃げられていない。


それも、目的である知由の代わりだ。


生きているか、不安だ。



「賢明な判断だな」


「それでいつもと違う格好だったのか」


「その子、大丈夫なの?」



対して海、一弥、滋はそんな様子がない。



「絶対に言葉を発するな、顔を上げるなとは言っておいた。まあ、殺される可能性はないな」



話していることはいつもと変わらないのに、やっぱり余裕がないらしい。



知由は友奈を早く助けたいという気持ちをどうにか抑え、冷静に判断しているようだ。

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