探偵喫茶へようこそ


知由を先頭に、四人は廃ビルに足を踏み入れる。



「なあ……少し気になったことを聞いてもいいか?」



前を歩く知由に、一弥は問いかけた。



「くだらない質問だと……わかっているな?」



振り向いていないのに、表情が見えないのに、一弥は睨まれていると感じた。



「……なんで犯人はお前の親だと名乗って、お前を誘拐したんだ?」


「さあて……なぜだろうなあ」



確実に、わかっていながら教えない、というやつだ。



いつでもどこでも性格が悪いな、お前は。



一弥はそう心の中で言った。



「まあすぐわかるさ」



知由はそう言いながら、足を止めた。


目の前にはドアがある。



「この奥に、犯人が……?」



雪兎がどこか怯えたような声をした。



「一弥。覚悟しろよ」


「は? どういう……」



知由は一弥の言葉を最後まで聞かず、ドアを開けた。

< 79 / 156 >

この作品をシェア

pagetop