探偵喫茶へようこそ
知由を先頭に、四人は廃ビルに足を踏み入れる。
「なあ……少し気になったことを聞いてもいいか?」
前を歩く知由に、一弥は問いかけた。
「くだらない質問だと……わかっているな?」
振り向いていないのに、表情が見えないのに、一弥は睨まれていると感じた。
「……なんで犯人はお前の親だと名乗って、お前を誘拐したんだ?」
「さあて……なぜだろうなあ」
確実に、わかっていながら教えない、というやつだ。
いつでもどこでも性格が悪いな、お前は。
一弥はそう心の中で言った。
「まあすぐわかるさ」
知由はそう言いながら、足を止めた。
目の前にはドアがある。
「この奥に、犯人が……?」
雪兎がどこか怯えたような声をした。
「一弥。覚悟しろよ」
「は? どういう……」
知由は一弥の言葉を最後まで聞かず、ドアを開けた。