夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
「すまんね。
少し目を離したら転んでしまって……」
申し訳なさそうな表情をしながらヒカルを手渡すお祖父様に、私は首を横に振ると笑顔で泣いている息子をあやした。
「ほら、ヒカル〜泣かないの。そんなに痛くないでしょ〜?」
転んだ、と言っても見た感じ擦りむいた所も赤くなった所も特にない。
私が背中をポンポンと叩きながら抱き締めてあげると、ヒカルはぎゅ〜っとしがみ付いてきた。
活発で元気な姉のヒナタと違って、ヒカルは泣き虫で甘えん坊。
二人とも黒髪に黒い瞳で、私似で……。
ヒカルは私の父のギルバートの幼少期によく似ているらしく、お祖父様はもうメロメロ。
ヒカルが産まれた時。
私似のこの子を見た瞬間。
残念なような、嬉しいような、複雑な気持ちが葛藤した。
”ヴァロンにそっくりな、男の子がほしい”……。
そう願った私が、彼との別れ際に身籠った命。