夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】

自分は酷い母親だと思った。

選択肢は一つしかない。
この子達を守る事が当たり前の筈なのに……。
ヴァロンにもう会えないのだと思ったら、一瞬心が揺れた。

子供達を手放せる筈なんてないと思いながらも、私の中の”女”の部分が愛しい人を求めて揺れる。

そんな自分を恥じて、腕の中で「ママ?」と私を呼ぶヒナタとヒカルの顔が見れない。
暫く抱き締めたままでいると、背後のベンチからミネアさんも立ち上がる気配を感じた。


「可愛いお子さんね。わたくしも早く欲しいわ、マオ様との子供。
……では、ご機嫌よう」

弾んだ綺麗な声と、軽やかに歩き去って行くヒールの音が私の胸にズキズキと刻むように突き刺さる。

……。

やっと再び巡り逢えた、愛おしい人。

けれど。
その人はもう、私の”夫”ではなかった。

待ちに待った再会は、残酷な現実と一緒に私達に訪れたのでした。

……
…………。
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