夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
【マオ38歳/港街】

本屋の片隅にある絵本が並ぶ場所。
僕は足を止めて、気になった一冊を手に取った。
タイトルではなく表紙絵を見て決めると、開いて最初のページを覗く。


何分位だろうか?
その1ページをじっと見つめながら読んでいると、隣から聞こえるクスクスという笑い声と視線を感じて、僕は目を向けた。

そこに居たのは、10歳位の男の子。


「お兄さん、大人なのになに真剣に読んでるの?
それは子供が読む絵本だよ〜」

男の子が、笑いながら言う。
絵本を覗き込んで、その内容を見て、また僕を見て笑って、更にこう言った。


「さっきからこのページばっかり見て難しい顔してる〜!
まさか、こんな簡単な絵本も読めないの?」

「っ……」

男の子の言葉に動揺して、一瞬でカァッと顔に高まる熱。
僕は絵本を慌てて元の場所に戻すと、本屋を出た。

……
…………。
< 113 / 322 >

この作品をシェア

pagetop