夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
バクバクと鳴り響く鼓動と共に、男の子の言葉が僕の中で何度も木霊する。
”まさか、こんな簡単な絵本も読めないの?”。
図星だった。
言われて当然の事なのに……。
情けなくて落ち込んだ僕は、逃げるように本屋を出て早足で歩いた。
その間にも、すれ違う人の視線や話し声、周りの雑音が響く度に心拍数が上がる。
心臓が痛いくらいに鳴り響いて、苦しい。
分かってる。
誰も僕を見ている訳でも、噂している訳でもない。
でも。
何だか怖くて、不安で……。
まるで真っ暗闇に迷い込んだような、どうしようもない孤独に追い込まれて身体が震えた。
自分は一体、何者なんだろう?
この三年間いつまで経っても出ない答えが、僕の居場所を定めさせてはくれない。
人混みから逃げるように、俯きながら歩いて歩いて……。
気付いたら、辿り着いていた街外れ。
そこは中心部の栄えた場所よりは人が少なくて、僕は誰も座っていないベンチを見付けると少しホッとして腰を降ろした。