夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
ゆっくりと深呼吸をして気持ちを落ち着けると、胸ポケットに入れていた伊達メガネを手に取って見つめる。
「……。
これ、何とかならないかな……」
状態を改めて確認するが、先程壊れてしまった伊達メガネはレンズが割れており、フレームも曲がっていて自分の力で直す事は不可能だった。
やっぱり駄目か、と溜め息を吐いて俯く。
伊達メガネ。
それは僕とって、強く在る為のお守りのような存在だった。
素顔や素性。自信のない自分を隠してくれるようで、安心出来るお守り。
掛けていると少しだけ、心細い気持ちを紛らわす事が出来た。
そんな物に頼っていてはいけないと分かりながらも、僕には手放せない物。
”我が一族で在りたかったらその容姿を消せ!
その醜い姿を決して見せるな!”
でも。
祖父からそう言われて、本来の髪色も瞳の色も否定された僕はすでに嘘の塊。
髪を染め、常にカラーアイレンズを入れて毎日生活をしている。