夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】

「……眼鏡があってもなくても、”本当の僕”なんて何処にもいないのかもね」

そんな事を思って、壊れた伊達メガネを両手で握り締めていると……。


「マオ様、み〜つけた!」

明るい声と同時に、背中にフワッと暖かい温もりを感じた。
聴き慣れた声と、柑橘系の香水の香り。


「!……ミネア、さん?」

顔を上げて振り向くと、ベンチに座る僕の背後でミネアさんが微笑んでいた。


「も〜、マオ様ったら酷いですわ!
本屋にいるって言ったのに、勝手に移動しちゃうんですもの。捜しましたわよ!」

「!……あ」

ミネアさんに指摘されて、僕はハッとした。

最悪だ。
自分で待ち合わせ場所を指定しておきながら移動して、しかも今の今まですっかり忘れていた。
汗がタラタラと垂れそうな位に慌てる。


「あ、あのっ……!」

「あ〜あ、マオ様にとって私の存在なんてその程度なんですのね〜。悲しい……」

少し拗ねたようにそう言うと、さっきまでの笑顔を曇らせたミネアさんは僕の隣に座って俯いてしまった。
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