夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
入院生活が三ヶ月程過ぎた、ある日。
リハビリの時間でもないのに、僕の病室の扉がガラッと勢い良く開いた。
ここ暫く誰も面会に来なかった僕にとって、先生や看護師さん以外の訪問には戸惑いを隠せなくて……。
でも、見知らぬ女性は屈託もなく微笑んで言った。
「一緒に散歩に行きません?マオ様!」
赤みがかった茶髪を窓から射す日差しでオレンジ色に輝かせながら、パッチリした猫目を細めて笑顔を見せる、とても美しい女性。
僕に向かって微笑んでくれた、その初めての存在に驚いて……。
あんなに苦手だった相手と見つめ合うという事が、一瞬自然と出来ていた。
すぐに我に返って、目を逸らしてしまったけど……。
この時、確かに胸に暖かさを感じた瞬間だった。
笑顔で傍に居てくれる存在。
彼女が僕に、生きている意味をくれた。
……
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