夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
(5)
突然、僕の目の前に現れた女性。
名前はミネアさんと言った。
記憶を失っている僕にとっては初対面同然だったけど、彼女の話し方や接し方から、以前から面識があったのだと何となく分かる。
それから……。
初めて面会に来てくれたその日から、ミネアさんは頻繁に僕の元を訪れるようになっていた。
何気ない話をしに来てくれたり、差し入れを持って来てくれたり……。
時には僕を散歩に連れ出し、リハビリにも付き添ってくれた。
でも、僕は何も出来ない。
話し掛けられても上手く対応出来なければ、せっかくの差し入れにも食欲が湧かず……。
散歩だってほとんど彼女に車椅子を押してもらって、リハビリも大した成果は得られない。
そんな毎日は彼女にとって、良い事なんて何一つない筈だった。
喜ばせられる事なんて出来ない以前に、人をガッカリさせる事しか僕には出来ない。
それなのに、僕の所へやって来て嬉しそうにしているミネアさんが……。
僕には意味不明で仕方がなかった。
彼女の笑顔を見る度に、不思議で仕方がなかったんだ。