夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
そんな日々が暫く続いて、僕は知った。
彼女が大手企業の社長令嬢で、次期に父親からその座を譲り受ける存在である事を……。
自分の祖父や弟もそれなりの地位を持っている事も分かっていたが、ミネアさんの存在は更にその上。
まさに”高嶺の花”というに相応しい存在だった。
不思議に感じていた疑問が、ようやくハッキリする。
そんな身分の彼女が僕に近付く理由なんて、たった一つ。
ボランティアでしかない、という事。
特別な理由を期待していた訳ではなかったけど、あの笑顔が”ボランティア”なのだと思ったら正直悲しくて心が沈んだ。
でも……。
同情なら、もう来るな!!
そう言いたいのに、笑顔で僕の元を訪れてくれるミネアさんを見たら言えなくて……。
また誰も面会に訪れてくれない独りぼっちの日々に戻るくらいなら、例え同情でも傍に居てほしいと思ってしまう弱い僕が居た。
唯一、自分に微笑んでくれる彼女の存在を、僕は跳ね除ける事なんて出来なかった。
そうやって、何も言えないまま月日だけが過ぎて……。季節は秋になっていた。
……
…………。